電気自動車(EV)に注目が高まっており、タイの自動車産業に、多大な革新をもたらしています。金属加工はEV車の製造工程においてどれほど重要性を与えるなのか。このCutting Tools Tips記事では、MEGA Techが柔軟な加工対応する切削工具のサンドビック・コロマントのコロミル®をご紹介します。汎用性の高い、1回のセットアップで部品を完全に加工することが可能で、機械を止めることがなく、時間節約型のソリューションを提供します。

電気自動車向けパワースカイビング
いかにしてメーカーがパワースカイビングにより機械使用90%削減を達成可能か
電気自動車(EV)がマルチギアやデュアルトランスミッションを必要としない例として、テスラの自動車がよく引き合いに出されます。即ちそれが必要な全モデルを除いてです。マルチギアEVのトレンドが加速し始めるにつれ、金属切削業界の世界的リーダーであるSandvik CoromantのグローバルオートモーティブトランスミッションマネージャーであるMats Wennmoは、パワースカイビングとして知られる工程が、加工時間を大幅に短縮しながらEVメーカーの追い上げにどう役立つのかを説明します。
テスラのデュアルモーターモデルS、モデルX、モデル3の車両には、各々2つの異なるギアがあり、1つは前部に、もう1つは後部にあります。ギアを複数備えたEVの可能性についてはポルシェも調査しており、ポルシェはEVであるタイカンに2速ギアボックスを搭載しました。ポールスター、ボルボ、ルシード、フォルクスワーゲンなどの電気自動車にも全てトランスミッションがありますが、これまでの自動車のようなトランスミッションではありません。 新技術には、車両用技術システムの製造者であるZFが発表した2速EVトランスアクスルドライブユニットがあります。
EVには複数ギア比のパフォーマンス上の利点がいくつかあり、これについてこの記事で見てみます。 しかしポルシェやテスラなどのマルチギアEVが成功したとなれば、他のメーカーは、自社の生産の費用効果を保ちつつ、どのように追随できるでしょうか。
図1に示すように、EVにトランスミッションが必要な理由は主に2つあります。1つは、EVの1分あたりのトルク/回転数 (rpm) 比がガソリン車の場合のように同じではないことです。EVでは、トランスミッション無しにバッテリーからトルク/加速を達成するのは困難です。 EVにはノイズをカバーするエンジンがないため、高トルクはギア側面により高い負荷をかけ、高rpmと相まって、ノイズ削減が焦点となります。
第二に、EVでrpmが高いと、トランスミッションに高い品質要求が課せられ、従来の機械加工法を使用するのがますます困難になってきます。これには、加工機械が一列に並んでいる場合、ギアコンポーネントが次の機械に移動するたびにギアに狂いが加わる場合が含まれます。EVトランスミッションは主に遊星トランスミッションであり、ここではコンパクトなデザインによりトランスミッションに必要な重量とスペースも削減されています。一部のトランスミッションは、始動時にトルクとrpmを下げるのが役割であるため、リダクショントランスミッションとも呼ばれます。

実際のパワースカイビング
では、メーカーがこうした高品質のトランスミッションコンポーネントを製造するための最良の方法は何でしょうか。その答えは、1世紀以上前から存在している概念、即ちパワースカイビングにあります。この工程は、歯車切削のための機械加工プロセスである成形とホブ盤を組み合わせ、単一の連続切削工程としたものです。
パワースカイビングには、高い生産性や柔軟性といった、従来の機械加工法に比べた利点がいくつかあります。この方法を使うと、単一のセットアップで、1台のマルチタスク機、即ちマシニングセンターにて、コンポーネント全体を加工することが可能です。これにより生産時間が短縮され、品質が向上し、取扱いやロジスティクスのコストが削減されます。このプロセスは、管理可能且つ予測可能なコンポーネントの機械加工の助けにもなります。
全ての機械加工を単一のセットアップで実行できるため、複数の専用機や機械の交換が不要となります。ダウンタイムが信じ難いほど高コストにつく自動車メーカーにとって、機械の交換を減らせることは、収益に大きな影響を与える可能性があります。
あるSandvik Coromantの顧客は、Sandvik Coromant CoroMill®178またはインデックス可能なCoroMill 180を使用して、低合金16MnCr5鋼製のメインギアコンポーネントを成形しようとする際に、パワースカイビングをテストしました。
CoroMill 178H PM-HSSソリッドパワースカイビングカッターにて、ワークの荒加工と仕上げが行われます。以前は、顧客はこの工程にシェイプカッターを使用し、荒加工段階で40 m / min (131 ft / min)、仕上げ段階で50 m / min (164 ft / min) の切削速度で運転していました。この方法を用いれば、荒加工と仕上げの両方で速度を250-300 m / min (820-980 ft / min) に上げることが可能です。
全体として、メーカーはCoroMill 178H PM-HSSカッターを荒加工3-5段階と仕上げ2段階に適用しました。顧客はまた、ツールのセットアップとインデックス作成時間が削減され、プロセスの安定性が向上し、コンポーネントの品質が大幅に向上したと報告しています。品質の向上は主に、異なる機械/機械加工操作間でコンポーネントを移動する必要がなく、中心偏差や振れ偏差が加わらなかったことによるものです。 全ての機械加工が単一のセットアップでできました。
さらに、時間のかかる成形プロセスをパワースカイビングに置き換えることで切削時間が短縮し、工具寿命が大幅に向上しました。 これは、加工時間の90%短縮に相当し、顧客の元に貴重な空きキャパシティが大量に残ることになります。

工具の選択
Sandvik Coromantは、パワースカイビング用の一連のカーバイドカッター、CoroMill 178S、および粉末冶金高速度鋼 (粉末ハイス鋼、PM-HSS) 製のCoroMill178Hも提供しています。 これらは非常に高い精度とパフォーマンス用に設計されており、モジュール0.5–6 (DP 50–5) に使用できます。 Sandvik Coromantは、CoroMill 180も提供しています。これは、レール付きインサートシートを備えたインデックス可能なインサートカッターで、2.5-8 (DP 10-3) にわたるモジュールで優れた再現性のある精度を実現します。
パワースカイビングは昔から存在していましたが、機械がより堅牢で剛性が高くなり、メーカーが新しい機械加工方法を模索するにつれ、最近になって新しい方向に進んでいます。 パワースカイビングは、短いリードタイムが決定的である大量生産の場面や、自動車やEV製造市場などのようにダウンタイムのコストが高くつく業界において、特に効果を発揮します。
Article by: Sandvik (Thailand) Co., Ltd. & MEGA Tech