タイのヘルスケア市場は有望だ。KPMG によるとタイの医療費は 2023 年に 246 億米ドルに達しGDPの4.0%に相当。2014 年から 2023 年までの CAGR は 5.4% に達すると予想されており医療と医療機器市場の両方が成長するとの予測だ。医療費の増加はタイの人口の高齢化もその一つの理由である。高齢者の大部分が少なくとも一つのNCDを持つ と診断されており粗半数が高血圧と診断されている。そしてそれに続くのが糖尿病、心臓病、脳卒中、癌である。これらの事実により特に診断目的で最新のハイテク医療機器の需要が高まるであろう。

Source: Bolliger and Company (Thailand)
タイの推定年間医療サービス収入は45億米ドルでASEANトップであり、28 億人の外国人患者がタイで治療を受けている。タイはASEANにおいて医療機器の最大の輸出入国だ。Fitch Solutions の報告書に基づく数値に基づいて KPMG が発行した報告書によればタイの国内医療機器市場の2018年から2022年までのCAGRは7.5%で2022年には 200 億米ドル相当になると予測されているとの事だ。タイの製造業者の大半(43%)は使い捨てデバイスを製造しており続いて耐久性のあるデバイス(28%)、サポート サービス(6%)、試薬とテスト キット(6%)、その他 (11%) を製造している。

Source: Thailand Pharmaceuticals and Healthcare Report 2021, Fitch Solutions
医療機器市場は2021年には5,326 億 2,000 万米ドルと推定され2022年から2027年のCAGRは5.5%を記録すると予想されている。COVID-19 のパンデミックは市場に様々な影響を与えた。現在も各国はパンデミックの巨大な脅威に直面し続けている。殆どの製薬会社およびにバイオテクノロジー会社は研究開発部門をコロナウイルス疾患の治療に使用する新しい分子の特定またはその治療方法の先駆者となるべくその力を集中させている。パンデミックによって引き起こされたサプライチェーンの混乱により、世界中で重要な医療機器が不足した。

Source: Mordor Intelligence
2021年のタイの医療機器市場の価値は約60億米ドルであった。COVID-19パンデミックに対処するために地元のメーカーは保護具(PPE)の生産を増やした。タイはニトリル手術用手袋や手術用マスクなどのPPE材の重要な生産国且つ輸出国であるためタイの医療機器の輸出は前年比22%増加。2021年4月タイ食品医薬品局(タイ FDA)は国家の規制システムをSEAN医療機器指令(AMDD)規則に合わせるべく新しい医療機器規則を発行した。この新規制では全ての医療機器の技術データが必要だ。このデータはASEAN Common Submission Dossier Template形式を使用しての提出が求められる。
確固たる医療インフラ、高度な技術を持つ医療専門家、国際標準の医療サービス、手頃な医療費価格を備えたタイは医療観光の世界的なハブだ。2019年には約350万人の医療ツーリストがタイを訪れた。2022年6月時点においてJoint Commission International(JCI)は臓器移植から歯科および美容整形に至るまで様々な医療を提供する62のタイ医療機関を認定している。タイには38,512を超える医療施設、24,800の民間クリニック(64%)、9,800の公衆衛生および地区健康増進センター施設(25%)、370の私立病院(2%)–それらの3分の1以上はバンコクに位置、そして294 の公立病院 (1%)等。

Source: Medical Tourism Index (MTI)
治療のためにタイを訪れる外国人患者の数の回復は病院で質の高いケアとサービスを提供するタイの能力によって支えられている。多くの私立病院はタイ国内およびに海外からの患者の需要の増加に対応するために複雑な状態の治療を計画している。大規模な病院の多くは既存の施設を拡張し新しい支部を開設している。例えばバンコク病院は 2023年までにネットワークを49ヶ所から50ヶ所に増やしその能力を172床まで拡大し神経障害と骨、関節症状の専門治療に焦点を当てる事を計画している。バムルンラード病院も202床のペッチャブリー キャンパスの開設を計画しており、カセムラード病院に至っては最近2020年にアランヤプラテートに新しい支部を開設した。
お持ち帰りメッセージ
それなりに大きい医療機器市場、全国的なヘルスケアへのアクセス、およびに外国人に優しい規制環境を備えたタイはアジア市場への参入を検討している医療企業に絶好の機会を提供している。世界クラスのヘルスケア部門を創設する事は未だに変わらぬ優先事項でありヘルスケア部門は今後数年間で大幅に進歩、拡大すると予想されている。高齢化社会、病院や診療所の増加、政府の医療費の出費増、そして医療観光客のお気に入りの治療目的地としての人気の高まりは需要と市場にプラスの影響を与えるであろう。
Article by: Asst. Prof. Suwan Juntiwasarakij, Ph.D. & MEGA Tech