Saving & Conservation Energy

変電アンテナと太陽光発電アンテナ

Rectenna and Optical Rectenna
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Article by: Asst.Prof. Yod Sukamongkol
Faculty of Engineering, Ramkhamheang University

    現在、発電所から電力を供給するために電線は欠かすことができませんが、この電線が電圧低下やショート、電線設置費用が高額であるといった電力供給問題の原因となっています。これらの問題を解決し、コスト削減、電力供給距離の延長、発電所設置制限の低減を実現するため、研究者たちはケーブルを使用せずに電力を供給する方法を開発しています。

    これらの考えは近未来のことのようですが、実は19世紀初頭に電気工学の分野で有名な発明家ニコラス・テスラーが提言しており、アメリカのColorado Springs試験場で無線送電の実験も行いました。しかし、その時代には材料科学や通信手段の面で制限があり、その実験は満足の行く結果とはなりませんでした。それでも、テスラーの業績は、電動歯ブラシや携帯電話など現代の無線送電の原型として応用されています。

変電アンテナ

    無線送電のもう一つの目的は、送電距離を伸ばし、継続させることです。研究者たちは変電アンテナ又はレクテナの開発に取り組んでいます。通常、アンテナは電磁波(ラジオ、テレビ、Wi-Fi)を受信し、その電磁波を光、色、音などにコーデックし電子機器に送信します。しかし、この変電アンテナは電磁波を受信後、直流(DC)に変換します。

    MIT研究所やスペインのマドリード技術大学の研究者たちは、半導体装置によって交流電波を直流に変換することにより小さなアンテナで交流(AC)のWi-Fiを受信する実験を行いました。この実験によって、LED照明や電子チップなど省エネ装置に必要な40マイクロワットほどの微小電力を生み出すことができました。このアンテナは電源に繋いだり、バッテリーを消費することなく、電気機器や電子機器のための動力を生み出すことができます。

変電アンテナと太陽光発電アンテナ

    これまで変電アンテナはシリコンやガリウム砒素といった、強度が低く高コストの原料で作られてきました。しかし、最新技術によりレクテナを二硫化モリブデン(MoS2)で製造することで、極薄、曲げ加工が可能となりました。また日常的に使用するWi-Fi、ブルートゥース、4Gなど電子機器に使用される電波や高周波ギガヘルツの電波を受信することができます。実験により2.4ギガヘルツの電磁波の場合、変電アンテナの効率が31%高まることが分かりました。

    レクテナは曲げることが可能なため、壁、道路、電柱、橋脚、身の周りの電子機器や小型端末などあらゆる場所で使用することができます。もう一つの利点は、バッテリー無しで電子機器を使用できることです。周囲の電磁波から電力を生み出すことができるため、バッテリーから金属が溶け出し生命の危険にさらされるというリスクを負うことなく、身体に埋め込む必要のある医療機器を安全に使用することができます。

太陽光発電アンテナ

    通常のソーラーパネルを使用した太陽光発電は、電子と正孔により内蔵電位が発生し、PN接合に移動することにより発電しています。太陽光発電アンテナ又は光レクテナはそれとは異なり、光レクテナを生み出すためにナノテナと超高速ダイオードにおいてナノテクノロジーを用いなければなりません。これら2つを密着させることで、太陽光がアンテナに到達すると高周波の振動がアンテナ内に生じ、交流を直流に変換するダイオードに送られます。これによりアンテナは、太陽光から直流電流を発電することができます。実験により、アンテナとダイオードを近づければ近づけるほど直流電流の発電効率が高くなることが分かりました。現状、ソーラーパネル発電の効率が15%であるのに対して、ナノテナの発電効率は1%に留まっています。

    無線送電の当初の目的から始まり、身近な電磁波から燃料費をかけずに電力を生み出すこれら2つのアンテナに到達しました。しかしながら両者とも発電効率が悪く、将来クリーンエネルギーを実用化するためには効率を高め、低コストな発電を行う研究や開発が必要です。